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公明代表、習近平氏と会談実現せず 対中外交の難路映す

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【北京=今井秀和】公明党の山口那津男代表は23日、2日間の訪中を終えて帰国した。中国共産党の最高指導部メンバーと政党間交流の再開を確認したものの、打診していた習近平(シー・ジンピン)国家主席との会談は実現しなかった。

中国が日本との対話継続へ舵(かじ)を切るなかで、歴史的に関係が深い公明党の代表でも習氏に会えなかったことは対中外交の難しさを浮き彫りにする。

山口氏は日中平和友好条約の締結45年にあたる2023年に訪中して習氏と会談すべく働きかけていた。

具体的な日程を挙げて調整を試み、いったんは8月下旬に訪中するところまでは固まった。東京電力福島第1原子力発電所の処理水放出に中国が反発して延期となった後も打診を続けた。

中国側が出してきたのは共産党序列5位の蔡奇(ツァイ・チー)政治局常務委員、王毅(ワン・イー)共産党政治局員兼外相らだった。岸田文雄首相から習氏あての親書は蔡氏に渡した。

公明党が習氏にこだわった背景には支持母体である創価学会と中国の関係がある。国交正常化する前の1968年、公明党創設者でもある池田大作会長(当時)が日中国交正常化を提唱した。

72年には公明党の竹入義勝委員長が訪中して周恩来首相と会った。その2カ月後、田中角栄、周両首相が日中共同声明に署名して国交が正常化した。池田氏自身も74年に周氏と会談した。中国は公明党を対日関係の重要なパイプと位置づけてきた。

山口氏は2009年の代表就任後、訪中するのは7回目となる。このうち17年までの4回は習氏と会った。沖縄県・尖閣諸島の国有化直後で日中関係が戦後最悪と言われた13年も会談は実現した。

与党の代表とはいえ政府のトップではない立場の人物と習氏が会うこと自体が珍しい。公明党が独自外交の力を示す意味があった。

一方で、公明党が自民党と連立を組み、中国が大国になるにつれて溝は広がった。自公両党の協議によって集団的自衛権の限定行使を認めた安全保障法制が成立した15年、中国共産党内では公明党への批判が強まった。

山口氏が17年に訪中した際、習氏との会談は短時間だった。18年以降の訪中では会談が実現していない。

23日に会談した王氏は日本の防衛力強化について「中国への特別な見方」があると懸念を示した。山口氏は「日本の世論は国際社会の動きを映す鏡だ。国民感情を友好的なものに変える双方の努力が重要だ」と指摘した。

今回会った蔡氏は先の米中首脳会談や日中首脳会談にも同席した習氏最側近の一人だ。前回の訪中である19年の相手は最高指導部メンバーでない宋濤中央対外連絡部長だったため、格上げになったとはいえる。

蔡氏は中国共産党の中央弁公庁主任で、日本の官房長官に近いポジションにいる。習氏の秘書役でもあり、山口氏は「(意見を)国家主席に最も届けやすい人だ。実質的な対話のつながりが期待できる」と強調した。

蔡氏らとは日中首脳会談で確認した「戦略的互恵関係」の推進に取り組むと確認した。自民、公明両党と中国共産党の幹部が相互に往来する「日中与党交流協議会」の再開に向けて調整する。

中国は経済減速の懸念を抱え、外相と国防相が失脚するなど内政に揺らぎがみえる。24年1月の台湾総統選をにらんで直近は対外関係の安定に動いており、習氏は米国や日本、オーストラリアなどと相次いで首脳会談をした。

山口氏もこの流れに沿って習氏との会談を探った。公明党訪中団の一人は「中国側からは周辺国との『協調』という言葉が目立った。国際的に孤立を感じているのだろう」と分析する。

両国間で問題が生じた際、政府とは別のチャネルを持っていれば対話を通した解決を探りやすくなる。偶発的な衝突が起きるリスクは常にある。

中国が対話に前向きでいる間に重層的な関係をつくることが危機管理には不可欠となる。今回の訪中は中国で絶対的な権力を握る習氏と会うハードルの高さとともに、代替手段として習氏に直結するパイプを作る重要性を示した。

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