処理水放出、中国「心配」47.6% 日本は対中感情が悪化
日中・共同世論調査
日本の非営利団体「言論NPO」と中国の海外向け出版発行機関である「中国国際伝播集団」は10日、両国で実施した共同世論調査の結果を発表した。東京電力福島第1原子力発電所の処理水放出について中国側で「心配」と答えた人は47.6%と半数近くになった。
東電が8月下旬に始めた処理水の海洋放出に関する問いを設けた。中国では処理水放出を「大変心配している」が22.1%、「ある程度心配している」は25.5%だった。一方で「全く心配していない」と「あまり心配していない」は合わせて26.7%となった。
日本も処理水放出については見解が分かれた。「全く心配していない」と「あまり心配していない」は計37.3%で、「大変心配している」と「ある程度心配している」を合わせた33.2%を上回った。
中国は東電の処理水放出を受けて国際会議などの場で日本への批判を強め、日本産水産物の輸入を全面的に停止した。
中国の一連の対応は日本の対中感情に影を落とす。中国への印象を「良くない」、「どちらかといえば良くない」と答えた日本人は合計で92.2%と22年より4.9ポイント高かった。
調査を始めた2005年以降、14年の93.0%に続いて過去2番目の水準に悪化した。「良い」と「どちらかといえば良い」は合計で7.8%にとどまった。
中国に「良くない」印象を持つ理由を複数回答で聞いたところ、沖縄県の尖閣諸島周辺への領海侵入や領空侵犯が57.2%で最も多かった。「国際的なルールと異なる行動をするから」が49.1%で続いた。
「中国のメディアが反日報道を繰り返すから」との回答は22年の21.9%から40.7%と2倍近くに増えた。
中国人の日本に対する印象はほぼ横ばいだった。日本への印象を尋ねた質問で「良くない」と「どちらかと言えば良くない」は計62.9%だった。「良い」と「どちらかといえば良い」の合計は前年比1.8ポイント高い37.0%だった。
調査は23年8〜9月に両国で18歳以上の男女を対象に実施した。日本は全国で1000人、中国は北京、上海など10都市で1506人から回答を得た。
東京電力福島第1原子力発電所の処理水の海洋放出が始まりました。放射性物質トリチウムの処理水1リットルあたり濃度が国の安全基準の40分の1(1500ベクレル)未満であることを確認して放出。政府と東電は風評被害を防ぐため監視データを定期的に公表し、国内外に安全性を示します。周辺国では韓国政府が一定の理解を示す一方、中国は水産物輸入を全面停止するなど反発を強めています。
原発処理水とは(2023年8月23日掲載) https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA223OR0S3A820C2000000/