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[社説]企業の賃上げと投資増の機運を絶やすな

日本経済の回復への道のりが平たんでないことを改めて示した。2023年7〜9月期の実質経済成長率が3四半期ぶりのマイナスとなった。一時的な要因も多いが、内需の停滞が続いているのは心配だ。企業の賃上げと設備投資の機運を絶やしてはならない。

内閣府によると、実質国内総生産(GDP)の速報値は季節調整済みの前期比の年率換算で2.1%減となり、市場予想(0.5%減)を下回った。名目GDPの拡大も一服した。

過度に悲観する必要はない。実質GDPの減少率のうち、ざっと6割が民間在庫の伸び悩みによる押し下げ分だ。これも自動車の輸出が好調だった影響が大きい。

4〜6月期に年率4.5%増と高成長だった揺り戻しも出た。特にGDPから差し引く項目である輸入が前期に急減した反動で増加に転じ、全体をかく乱した。

気がかりなのは、個人消費や設備投資など民間の内需が停滞したことだ。市場では増加に転じるとの見方もあったが、前期比で0.6%減と前期(1.0%減)に続いてマイナスとなった。

個人消費は0.04%減。自動車の販売減のほか、所得の伸びが物価上昇に追いつかないなかで「値上げ疲れ」がにじむ。

働く人たちの所得の総額を示す実質の雇用者報酬は前年同期比で2.0%減り、前期の0.9%減からさらに落ち込んだ。今年の春季労使交渉での賃上げ効果が一巡してきたかたちだ。消費の力強い回復には来年も積極的な賃上げが続くことが大前提となる。

設備投資は前期比0.6%減。今年度は企業の強気な投資計画が目立ち、収益も総じて堅調なのに、なかなか現実の経済活動に結びついてこない。

資材価格の高騰のほか、人手不足も制約要因になっているのだろう。だが、長い目では人手不足こそが企業に投資を迫る。デジタルや気候変動への対応など案件には事欠かない。企業は未来につながる投資に踏み込んでほしい。

民間には10〜12月期はプラス成長に戻るとの予想が多いが、世界的な需要減速が堅調な輸出に下押し圧力をかけるリスクもある。

賃上げや投資増の機運を絶やさないためには成長継続への確かな展望が必要だ。政府の経済対策は短期の視点の痛み止めに偏る。民間の自発的な成長への取り組みを引き出す工夫が求められる。

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