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[社説]日中は問題の解決へ首脳対話を続けよ

岸田文雄首相は米サンフランシスコで中国の習近平国家主席と1年ぶりに会談した。国際会議の合間を縫って1時間以上、率直に意見交換できたのは半歩、前進である。ただ、多岐にわたる懸案の解決に何らかの道筋がついたわけではない。両国はトップレベルでの意思疎通を今後も継続すべきだ。

両国間には製薬大手、アステラス製薬の幹部をはじめとする日本人拘束問題、東京電力福島第1原子力発電所からの処理水放出に反発する中国による日本産水産物の全面禁輸などの問題がある。

日本人の拘束問題では首相が習氏に無条件の解放を求めたが、中国側から思わしい反応はない。理由不明のまま日本企業の派遣人員が拘束される事件がある以上、中国に人員を送るのを躊躇(ちゅうちょ)するのは当然だ。日本側は引き続き、強い態度で中国に解放を促す必要がある。

日本産水産物の禁輸を巡っては、両国の専門家レベルで科学に基づく対話を進める方向性で一致した。首脳レベルで同問題を話し合った意味はある。だが、双方の認識ギャップは大きく、解決に向けた道筋が見えたわけでもない。今後、様々な工夫を重ねながら、禁輸解除に向けた話し合いを粘り強く続けるべきである。

日本周辺では中国軍の軍事活動が活発化している。日本の排他的経済水域(EEZ)内に中国がブイを設置する許されない行為も目立つ。首相は会談でブイ撤去を求めたと強調したが、中国側は応じていない。

日中両国は「ハイレベル経済対話」の適切な時期の再開で一致した。同時に輸出管理を巡る対話も進むことになる。経済安全保障を重視しながら、自由で公平な経済貿易関係をどう維持していくのか。これは日中間の大きな課題であり続ける。

今年は日中平和友好条約45周年の節目にあたり、双方は今回、改めて両国間の「戦略的互恵関係」の包括的な推進を確認したとしている。17年前に遡る枠組みを再び確認し、未来に向けた共通利益を探る方向性は理解できる。

これを現在、両国の間に存在する深刻な様々の問題解決に結びつける必要がある。それができないなら、戦略的互恵関係は「絵に描いた餅」にすぎない。いま最も重要なのは、首脳レベルの意思疎通と信頼醸成である。今後の真摯な対話に期待したい。

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