[社説]油断許さぬ大手行の好業績
大手銀行の業績が急回復している。三菱UFJフィナンシャル・グループ(FG)など5大行の4〜9月期は連結純利益が前年同期の1.5倍に達した。海外の利上げや日銀の政策修正が追い風になった。各行は好業績に油断することなく、経済の持続的な成長に結びつける力量が問われる。
3メガ銀とりそなホールディングス(HD)、三井住友トラストHDの5大行合わせた連結純利益は1兆9960億円だった。三菱UFJFGが持ち分法適用会社、米モルガン・スタンレーの9カ月分の利益を計上した特殊要因を除いても、3メガ銀になった2005年度以降で最高だった。
好業績は日本でも金利が上がり始めた局面で、大手行の規模がものをいった。3メガ銀が国内の貸し出しでどれだけ稼ぐかを示す「利ざや」が拡大し、三井住友FGや三菱UFJFGの株式時価総額は上昇傾向が鮮明になった。
もっとも、各行のPBR(株価純資産倍率)は依然として解散価値の1倍を下回る。外国の金融大手と比べても株式市場からの評価はなお低い。規模の大きさに頼るばかりでなく、企業や個人に提供するサービスの対価である手数料を増やすなど、力強い成長の道筋を示す必要がある。
「金利のある世界」で銀行が担う役割は今まで以上に重くなる。いかに預金を集め、社会と経済に資する用途へ的確に振り向けるか。デジタル化に対応しながら店舗や営業を改めていくべきだ。
負のインパクトにも注意が要る。金利が上がればその分だけ債券の時価は下がる。集めた預金を国債運用に回した結果、9月末時点の債券の含み損は地方銀行だけで2.8兆円に膨らみ、6月末から7割増えた。環境変化に応じたリスク管理が課題になる。
実質無利子・無担保のゼロゼロ融資などの新型コロナウイルス対応の支援が終わり、企業倒産も増えつつある。各行は引当金を積んで倒産に備えながら、取引先を再生に導く腕を磨いてもらいたい。