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[社説]株式の非公開化には規律と戦略が要る

東芝が22日開いた臨時株主総会で、同社株式の非公開化に向けた議案が承認された。1949年から続く株式上場は12月20日に廃止となる。東芝経営陣は国内系ファンドのもと、長年にわたる戦略の迷走を終わらせ、事業の再建に力を尽くしてほしい。

東芝の迷走の直接のきっかけは2016年の米原発子会社の損失発生で招いた窮地を、物言う株主(アクティビスト)への増資で切り抜けたことだ。新株主との間で経営路線に食い違いが見られ、フラッシュメモリーなど優良事業の売却を余儀なくされた。

東芝の島田太郎社長は非公開化後の経営について「安定した株主体制のもとで技術を軸に改革する」と述べた。アクティビストの声から解放されるという意味では、理解できる発言だ。目先の利益還元より長期の投資計画などに集中しやすくなるだろう。

東芝のほかにも非公開化の道を選ぶ企業は目立つ。MBO(経営陣が参加する買収)の実施後に食材宅配のオイシックス・ラ・大地の子会社となる給食受託のシダックスや、北欧のファンドと組んで自ら上場廃止を選ぶベネッセホールディングスが代表例だ。

企業にとって上場は目標ではなく、成長のための手段である。上場後にファンドの力を借りて非公開化し、じっくりと成長戦略を再構築する企業は増えるとみられる。13年にMBOを実施した米デル・テクノロジーズは事業を見直し、18年に再上場した。

しかし、当然のことながら、新たに株主になるファンドも企業価値の向上を求めてくる。むしろ、上場している時よりも強い経営の規律づけや戦略が必要になるのではないか。そうでなければ事業再建は難しくなり、再上場などの出口も遠のいてしまう。

非公開化に踏み切る際にも注意が必要だ。既存株主に十分な情報が提供されないまま、ファンドなどが株式を安く買い取る懸念が常にある。価格が低すぎて非公開化に失敗した企業は少なくない。独立委員会が価格などの妥当性をチェックする仕組みが必要だ。

取引先や地域社会などステークホルダー(利害関係者)への責任を考えれば、非公開になったとたんに経営実態が分からなくなるのも問題だ。定期的に財務諸表や再建策の進捗などを説明するようにすれば、経営にもよい緊張感が出るのではないか。

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