OpenAI騒動 田中道昭さんらとThink!
日経電子版「Think!」は、各界のエキスパートが注目ニュースにひとこと解説を投稿する機能です。11月17〜24日の記事では、立教大学ビジネススクール教授の田中道昭さんが「OpenAI騒動、生成AI制御の『解』なお見えず」を読み解きました。このほか「北朝鮮が『軍事偵察衛星』発射」「日経平均、一時バブル後高値」といったテーマの記事に投稿が寄せられました。振り返ってみましょう。(投稿の引用部分はエキスパートの原文のままです)
「OpenAI騒動、生成AI制御の『解』なお見えず」をThink!
世界を生成AI(人工知能)の熱狂の渦に巻き込んだ「Chat(チャット)GPT」の公開から30日で1年。記念日を目前に、こんな大混乱が起こるとは誰も想像しなかっただろう。電撃的な解任から一転、サム・アルトマン氏が米オープンAIの最高経営責任者(CEO)に復帰することが21日、決まった。
【田中道昭さんの投稿】騒動がいったん決着して、米国の主要メディアでは近年テック業界でも影響力を増していた効果的利他主義という哲学・世界観を巡る争いだったという論調が目立っています。AIの進歩は人類に利益をもたらすべきだと考える一方、人類に危害を加えたり権力を不当に集中させたりする脅威を注視する価値観の同主義。マイクロソフト、グーグル、メタ等、生成AIの先進的企業が商業主義とAIの脅威に対してどのようにバランスをとって事業展開しようとしているのかもここで注目を集めています。本件を契機に、効果的利他主義論者が主張するAIの脅威が真剣に議論される機会となるのか、AIの利活用がスピードアップするのか、注目されるところです。
「北朝鮮が『軍事偵察衛星』発射」をThink!
日本政府は21日夜、北朝鮮が同日午後10時43分ごろ、北西部の東倉里(トンチャンリ)から弾道ミサイル技術を使った発射を強行したと発表した。北朝鮮が主張する「軍事偵察衛星」とみられる。
【竹内舞子さんの投稿】軍事偵察衛星の発射で懸念すべきは、ロケットの技術と衛星の解像度の両方です。5月に打ち上げたロケットの残骸から回収された衛星の解像度は低かったようですが、もしロケットと衛星の能力両方に関しロシアの支援を得たのであれば、衛星の能力も向上しているかもしれません。軍事偵察衛星を運用するなら、北が主張するように今後複数機を発射し、作戦地域を一日一回以上観測できるような体制を作るのが合理的です。したがって、今回衛星が実際に軌道に乗っていなくても、その失敗は隠して次の衛星打ち上げを行う理由ができます。今後安保理が対応を取れない中で堂々と安保理決議違反となる発射が繰り返されることになるかもしれません。
「日経平均、一時バブル後高値」をThink!
20日の東京株式市場で日経平均株価は一時、7月につけたバブル経済崩壊後の高値を上回った。1990年3月以来33年8カ月ぶりの高値となり、前週末比268円高の3万3853円まで上げた。前週末の米国株高で、東京市場でも買いが先行した。米長期金利の低下に伴うリスク選好ムードや、堅調な企業業績が株高の背景。買い一巡後は売り優勢となる場面がある。
【窪田真之さんの投稿】日本株上昇の原動力は、名目GDPの成長加速と考えている。今年の名目GDP成長率を5.3%と予想している。名目GDPの成長率が4%を超えたのは、バブル期の1991年以来のことだ。名目GDPの伸びが大きくなったために、税収は過去最大を更新し企業業績・株価にも押し上げ効果が働く。インフレ復活が名目GDPの伸びを加速している。国内で普通に値上げが通るようになった効果が大きい。インフレは国民生活にとって厳しいが企業の利益にとっては追い風だ。日本株の上昇牽引役は外国人投資家だ。長年続いたデフレと円安で、日本の物価・賃金・株価・地価とも国際比較で割安になってきたことを評価する買いが続くと予想している。
「創価学会の池田大作名誉会長が死去」をThink!
宗教法人創価学会名誉会長で、同会の戦後の飛躍的な拡大を指導した池田大作(いけだ・だいさく)氏が11月15日夜、老衰のため死去した。95歳だった。創価学会が18日発表した。葬儀は近親者で行った。お別れの会を行うが、日取りなどは未定。
【中北浩爾さんの投稿】ご冥福をお祈りします。牧口会長、戸田会長に次ぐ第三代の創価学会会長に就任したのが、32歳のこと。以後、強力なカリスマで創価学会を日本最大の宗教団体に成長させました。東京の大森の海苔製造業者に生まれた大衆的な宗教指導者で、長兄がビルマで戦死した体験などから反戦平和を熱心に唱えました。名誉会長になった後も、全国各地の学会員を励まし、創価学会の求心力の源泉であり続けました。「大衆とともに」の理念の下、公明党を創立し、発展させたことも特筆に値します。徹底した大衆性、SGIの創設にみられる世界的な視野など、これほどの宗教指導者は当面、日本には現れないでしょう。戦後日本を体現する一人だと思います。
「マンション建て替えやすく」をThink!
首都圏を中心に増える老朽マンションの再生が社会的な課題となっている。建て替え予定の分譲マンションに借り主が居座り工事できないケースがあり、決議に基づいて6カ月後の立ち退きを請求できるようにする。政府は決議要件緩和などと合わせた制度案を近く示し、2024年の通常国会への区分所有法改正案の提出をめざす。
【大槻奈那さんの投稿】所有権尊重の観点等から進みにくかった建て替え決議に対する大きな進展です。但し、実行段階でのハードルはまだ様々残されています。例えば借り主の退去については、立ち退き費用補償の水準をどうするのか。また、建て替えの賛成票も集まり難くなっている可能性があります。住人の一層の高齢化や、家賃上昇で建て替え中の移転費用の増加が課題です。更に、近年では室内のリノベーションが広く普及し、その技術が高額化していることから、一旦リノベした世帯はそれを無駄にするような建て替え決議には賛成しない可能性があります。一定の年数を経たマンションでは、できるだけ早い時期から理事会等で話し合いを始める必要があるでしょう。
「オランダ下院選、極右が第1党へ」をThink!
22日投開票のオランダ下院(定数150)選は、極右の自由党が第1党になる見通しとなった。同党は反移民・反欧州連合(EU)を掲げるポピュリスト(大衆迎合主義者)、ウィルダース党首が率いる。ドイツやフランスなどでも極右の勢いが増していて、EUの政策決定や合意形成に影響を与えている。
【岩間陽子さんの投稿】政権交渉が難航する見込みとは言え、極右政党がEUの中心メンバーの国で第一党になったことの衝撃は計り知れません。ドイツを含む欧州主要国で、反移民政策を掲げる極右政党が支持率を伸ばしています。オランダでこのような結果が出たことを、各国政府とも無視できません。「明日は我が身」との感覚は、どの国にもあります。まずは、EUや各国レベルでの移民・難民政策に直接の影響が出るでしょうし、中東やウクライナ戦争に対する政策にも、じわじわと影響が出てくる可能性が高いでしょう。
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