世界のCVCの投資額、ピークの3分の1に 23年7〜9月
23年7〜9月期のCVCによるスタートアップへの投資金額は、2年前に記録した四半期ベースの過去最高だった486億ドルから73%減り、投資件数も半減した。世界の事業会社がコスト削減に力を入れていることが影響した。
CVCは戦略的投資を続けているが、投資先の選別を強めている。23年7〜9月期のCVCが参加した資金調達ラウンド上位2件の調達額は合計で10億ドル近くに上った。
今回のリポートではCBインサイツのデータに基づき、23年7〜9月期のCVCによるスタートアップへの投資の状況を5つのポイントにまとめた。
1.世界のCVCによるスタートアップへの投資額と投資件数は18年以降で最低の水準に落ち込んだ。
2.CVCが参加したリテールテック企業のラウンドの調達額は22年1〜3月期以降で初めて前四半期比で増加に転じた。
3.23年1〜9月期にCVCが参加したレイトステージ(後期)企業のラウンドの調達額の中央値は41%減少した。
4.CVCが参加したラウンドのうち、1回の調達額が1億ドル以上のメガラウンドの件数の割合は41%と5四半期ぶりの高い水準になった。
5.CVCによる投資額が最も多かったのは米国で、件数ではアジアがトップだった。
CVCによる投資額と件数、18年以降で最も低い水準に
23年7〜9月期のCVCによる投資額と件数は18年以降で最も低い水準にとどまった。
同期のCVC投資の金額は133億ドルで、前四半期の148億ドルから10%減った。一方、スタートアップ投資額全体は前四半期比で11%増えた。
同期のCVC投資の件数は764件と、前四半期の913件から16%減少した。スタートアップ投資全体の件数は前四半期比で11%減った。
23年1〜9月期のCVCの数も前年同期比で減少した。
23年7〜9月期に投資件数が最も多かったCVCは三菱UFJキャピタルで、2位はSMBCベンチャーキャピタルだった。
CVCによるリテールテック投資額、22年1〜3月期以降で初の増加
23年7〜9月期のCVCが参加したリテールテックの資金調達額は前四半期比22%増の11億ドルだった。リテールテックは前四半期比でCVC投資額が増えた唯一の部門だった。これはCVC以外も含めた全体の投資状況とは逆行しており、同期のリテールテックへの投資額はほぼ10年ぶりの低い水準に落ち込んだ。
一方、CVCによるリテールテックへの投資件数は前四半期比16%減り、17年以降で最も少なかった。
23年1〜9月期のCVCが参加したリテールテック企業によるラウンドの調達額の中央値は1050万ドルで、デジタルへルス(1000万ドル)やフィンテック(790万ドル)を上回った。
23年1〜9月期のCVCによるレイトステージ投資額の中央値、41%減
23年1〜9月期のCVCが参加したラウンドの中央値は880万ドルで、22年通年の1000万ドルから減少した。
中央値は全てのステージで減っている。減少幅が最も大きかったのはレイトステージで、23年1〜9月期は5000万ドルと22年通年の8500万ドルから41%減った。
一方、23年1〜9月期のCVCが参加したアーリーステージ(初期)のラウンドの中央値は560万ドルで、22年通年の580万ドルから3%減にとどまった。
CVC投資件数全体に占めるメガラウンドの割合は41%、5四半期ぶりの高さ
23年7〜9月期のCVC投資件数全体に占めるメガラウンドの割合は41%で、22年4〜6月期以来の高さとなった。CVCが参加したメガラウンドの件数は30件、合計調達額は55億ドルで、いずれも前四半期の件数28件、合計調達額53億ドルと比較して増加した。
23年7〜9月期のCVCが参加した大型ラウンド上位2件の調達額は計10億ドル近くに上った。
・米データブリックス(Databricks):調達額5億400万ドル、シリーズI(23年1〜9月期のCVCが参加した最大のラウンド)
・米アセンド・エレメンツ(Ascend Elements):4億6000万ドル、シリーズD
CVCによる投資額が最も多かったのは米国、投資件数はアジア
23年7〜9月期のCVCが参加した米スタートアップによるラウンドの調達額は81億ドルと、前四半期の74億ドルから9%増えた。シリコンバレーやボストンに拠点を置く企業の調達額が17億ドルも増えたことが寄与した。
米国は23年7〜9月期のCVC参加ラウンドの調達額全体の半分以上(61%)を占めた。一方、アジアは17年以降で最低、欧州は20年以降で最低の水準に落ち込んだ。
CVC投資件数全体の40%をアジアが占め、トップを維持した。
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