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鈴木智子

一橋大学 教授

一橋大学 教授

実務とアカデミズムの両面からマーケティングを解き明かす。日本ロレアルやボストン・コンサルティング・グループを経て一橋大学大学院国際企業戦略研究科博士(経営学)。京都大学特定准教授などを経て2023年から現職。消費者行動やブランド戦略に詳しく、ローソンの社外取締役なども兼務。主著に「イノベーションの普及における正当化とフレーミングの役割」(白桃書房、2013年)
【注目するニュース分野】マーケティング、消費者行動、ブランド戦略
実務とアカデミズムの両面からマーケティングを解き明かす。日本ロレアルやボストン・コンサルティング・グループを経て一橋大学大学院国際企業戦略研究科博士(経営学)。京都大学特定准教授などを経て2023年から現職。消費者行動やブランド戦略に詳しく、ローソンの社外取締役なども兼務。主著に「イノベーションの普及における正当化とフレーミングの役割」(白桃書房、2013年)
【注目するニュース分野】マーケティング、消費者行動、ブランド戦略
鈴木智子

世界初のクレジットカードはダイナーズクラブによって発行されていたこともあり、アメックスは1958年に始めてクレジットカードを発行した当初から差別化を意識し、単なる機能的便益(現金の代替品)でなく、情緒的便益(憧れや喜び)の提供に力を入れてきました。プレミアムなポジショニングを確立するため、会員を限定し、プレミアムなブランドイメージを醸成と特別な顧客体験の提供に力を注いできたのです。2000年代に入り、米国ではChaseやCITIなどによる参入もあり、ロイヤルティプログラム付きのクレジットカード市場は激化しました。それでもアメックスが強さを誇っているのは、培ってきたブランド力の賜物だと思います。

鈴木智子

日本のモノづくりやサービスの品質は間違いなく世界でも最高レベルであり、ブランド構築能力だけが弱いと常々感じておりましたので、この記事にあるグランドセイコーの話は本当に嬉しく思います。ブランディングに長けているラグジュアリーブランドのノウハウを学んで、モノづくり+ブランドづくりで世界でのプレゼンスを高めて頂きたいと切に願っています。 「グランドセイコーは時計そのものにすべてを費やしている」「日本らしさ」など、差別化ポイントを海外のまなざしから再発見し、それらをブランドストーリーとして昇華させられると、圧倒的なブランドになると思います。本当に楽しみです。

鈴木智子

小売業にとって、PBは利益率が高いこと、そしてリテールブランドへのロイヤリティを高める強力なドライバーであることから、とても重要です。かつてはナショナルブランド(NB)と同品質のモノが安いというイメージでしたが、リテールブランドの強化につなげるためには、PBの価値提案力を高め、NBにはない魅力を生み出すことが大切になります。言い換えるならば、NBと同じようなモノを安く売っているだけでは、顧客ロイヤリティを獲得するのは難しいということです。 近年、スーパーの他、ディスカウントストア、ドラッグストア、コンビニなど、様々な小売りでPBの切磋琢磨が始まっており、レベルが上がっているのを感じます。

鈴木智子

マスメディアのマーケティング・コミュニケーション中心の時代には、曖昧なメッセージは良くないと言われたこともありましたが、デジタル時代を迎え、消費者も多数のメディアから情報を入手、さらには自ら発信するようになり、今は関心を持ってもらうための仕掛けが大切になっています。あえて教えないことで、知りたい欲望を高めるというのは上手いですよね。 商品特徴をあえて語らずにファンを増やしたブランドには、サッポロの黒ラベルもあります。他には、変な広告が話題になって、SNSで拡散されるということも増えています。今後さらに、ユニークな広告コミュニケーションが増えるように思います。

鈴木智子

過去の「資産」を再活用することができるのが、ロングセラーブランドやヘリテージブランドの強みです。「ガリガリ君のうた」のように、よく知られ、愛されている過去の広告キャンペーンを再訪することはその一つです。もちろん、過去の資産を再活用する上では、ひねりを加えたり、アップデートすることが大切になります。 過去の資産を活性化させることは、ブランド・エクイティの強化にもつながっていきます。強力な差別化ポイントだからです。 強いブランドを構築することの意義が、こうした事例からも見えてきます。

鈴木智子

フリマアプリという新規参入によってリユース市場が拡大し、競合もその恩恵を受ける構図が見てとれます。プレーヤーの増加と同時に、SDGsの浸透などで、消費者のリユースに対する意識が変化したことも大きいです。そうなると、フリマアプリとリアル店舗のそれぞれの特徴が消費者に支持されます。フリマアプリは便利ですが、売り手にとっては在庫の管理(売れるまで手元で商品を保管)・配送の手間など、買い手にとっては商品が確認できない・梱包が雑なことがあるなど、オンラインやり取りならではの不便さも生じます。リアル店舗だとそうした不満が解決されます。市場の拡大と共に様々な形態が共存することで、市場の活発化が期待できます。

鈴木智子

ソバーキュリアスというトレンドワードが広まることで、飲むことが好きな方が肩身狭くならないといいなと思います。アルコールは飲みすぎると健康にもお財布にも人間関係にも害ですが、適度に嗜めば人生の潤滑油となってくれることが分かっています。セルフコントロールの研究でも、過度に自制心を利かせると(我慢しすぎると)、反対に健康に良くないことも明らかになっています。また、アルコールは人類の文化そのものでもあります。紀元前8500年も前の頃から作られてきました。食事とお酒のマリアージュは食文化を豊かにしてくれました。こうしたことも忘れられることなく、飲む人も飲まない人も楽しめる、お酒の文化が続いてほしいです。

鈴木智子

誕生から44年ですから、ノスタルジア消費にもなっていると思いました。子供時代にうまい棒を愛食していた人であれば、冒頭のお子さんと同じ体験をされた方は多いのではないでしょうか。あの頃は大好きなうまい棒をぐしゃぐしゃにしてしまったけど、大人になった今であれば、大切に壊さず持ち運び・保管できる。こういった昔の思い出とリンクした感情にもヒットしていると感じました。一般販売でなく、クラウドファンディングという形を取ったことで、うまい棒のコアファンにターゲットできたことも成功の秘訣ですよね。価値をわかってもらえるターゲットに向けて提供することで、高くても売れることの事例でもあると思います。

鈴木智子

M&A後のリブランディングは、社内外に向けたメッセージの発信となる、とても重要な経営的活動です。リブランディングは単なる名前変更で終わってはいけません。市場に向けた新しい価値提案のショーケースでもあり、新しいカスタマープロミスを中心に、社員のエンゲージメントとモチベーションを高める機会でもあります。 ゼンショーとゼッテリアの今後に注目していきたいです。

鈴木智子

サービス品質が全般的に高い日本では、良いサービスの提供は当たり前であって、それ自体では高い顧客満足を得ることが難しくなっています。顧客を感動させるカスタマー・ディライトのためには、お客様の期待を「裏切る」ことも時には有用です。親切なはずのスタッフが失礼な態度で接客してくるというのも、新鮮な驚きを与えてくれるのかもしれません。こうしたことが不快感につながらないためには、文脈がきちんと共有できていることが大前提となります。店の名前、明確なコンセプト、境界線の存在(店の外に一歩でると、丁寧な接客)など、失礼さが舞台演出であるということが明瞭であることが、成功につながっているポイントだと感じます。

鈴木智子

丸亀製麺が、うどんではなく讃岐の製麺所のような体験価値を提供していることは有名な話ですが、コナズ珈琲もコーヒーではなくハワイにいるような体験価値を提供しており、そのことが顧客の高い支持につながっていることを理解しました。顧客体験(CX)の重要性がよく指摘されますが、消費者が本当に望んでいるのはモノやサービスそのものではなく、満足のいく体験であるということを改めて感じました。成熟経済である日本においては、CXを中心とした高付加価値は必須ともいえます。また、他にはない、ユニークな顧客体験であれば、お客様は高い価格を払ってくださるということも、インフレ時代においては学びの多い事例だと感じました。

鈴木智子

日本の高品質なおもてなしサービスは、どこでも誰でも体験でき、ある意味「無償」になっていると思います。宿泊産業でいうと、ビジネスホテルでも高級ホテルでもサービス品質は素晴らしいです。これは日本の良いところでもありますが、人材不足や賃金課題を考えると、おもてなしサービスは高価格帯で提供して、サービス提供者にも還元する仕組みが重要になるかもしれません。一方、日本はサービスロボットのフィールド実験も進んでいるので、人によるサービス、ロボットやAIによるサービス、人とロボットの協働によるサービス等、内容と価格の差別化が進むと、品質の高さは維持しつつ、顧客価値に見合うサービスを提供できるのではと思います。

鈴木智子

全員参加型のイノベーションについて研究していますが、経営トップのコミットメントが必須だということを痛感しています。(コミットメントにはいろいろなものがありますが、例えば、会社のビジョンやミッションに盛り込む、人・モノ・カネ・情報といったリソースを投資する、経営トップ自身が全社員に向けて語り続けるなど…。)この記事にあるソニーの事例からも、同じことを感じました。

鈴木智子

一橋ビジネススクールでは、海外のトップビジネススクールの学生に日本の機会と挑戦を紹介する集中講義があり、そこで取り上げたテーマの一つが、「超高齢化社会の日本」です。米エール大学やUCバークレー大学といった北米、南米、欧州、アジアなど、世界各地から学生が参加していますが、日本のシニアビジネスの可能性と面白さを全員が納得していました。他の国でも高齢化は進んでいますから、シニアビジネスとして横展開も当然可能ですが、それだけでなく、超高齢化社会というニッチ市場で生み出されたイノベーションの数々はシニア層以外のターゲット市場にも応用可能な優れた内容なのではと、さまざまな可能性を見出してくれていました。

鈴木智子

USJは最初の10年は赤字経営に苦しみましたが、2011年に黒字に転じて以来、快進撃を続けています。成功要因の一つは、ユニバーサルスタジオのコンセプトであった「映画の世界」から脱却し、「世界最高のエンタテインメント」を提供すると再構築したことです。そうすることで、ハローキティやアニメ、マリオなど、日本のユニークなコンテンツを活用して他にはない体験を提供できるようになりました。 USJをユニークで魅力的なテーマパークにすることにこだわりを続けた社員の方々、そしてブランドポジショニングを日本だけ変えることの説得に努められた経営陣の皆様の努力の賜物だと思います。

鈴木智子

ラグジュアリーの作り手としてのプレゼンスは低い日本ですが、歴史や伝統があり、良いモノやサービスへの目が肥えている日本人は、ラグジュアリーを理解し愛でることができます。すなわち、ラグジュアリーを作る上で大切なことを理解できる素地をすでにもっているということです。 日本のラグジュアリーが世界でプレゼンスを高めるためには、これまでの品質の高いモノづくり・サービスづくりに加えて、強いブランドづくりが必要になってきます。いいかえるならば、ブランドの核となるモノやサービスはすでにもっているので、ブランドのストーリーや夢、憧れを視覚化し、多くの人にコミュニケーションしていけば、世界でもっと輝けると思います。

鈴木智子

日本でも「TikTok売れ」が注目を集めていましたが、消費者発信のマーケティング・コミュニケーションが大ヒットにつながるというのは今やノーマルのようです。このグリマスシェイクのTikTok投稿に際して、TikTokユーザーたちはひねりを加えており、それはユーザーが主導権を握っていることを主張しています。要するに、ユーザーは企業のやっていることを見て、「私たちはあなたたちの予想とはまったく違う方向に持っていきます」と宣言しているのです。 消費者発信のマーケティングは増加すると考えられます。ブランドマネジメントとしては、こうした「コントロール外」の側面をどう織り込むかを考える必要があります。

鈴木智子

日本の品質の良いモノがこれほど安くていいのかという問題意識には多いに共感します。とくに外国から見たら、今は円安もあって、日本のモノやサービスは格安でしょう。 一方で、国内では、今の品質と価格が当たり前でしたから、「日本の品質は安すぎるんだよ」といって価格を海外並みにしても、消費者の納得は得られないでしょう。日本の賃金は海外と比べて安いのでなおさらです。 モノやサービスの価格を上げるためには、今のものにプラスαの価値を提供する必要があります。高付加価値です。そして、給与を上げていくことも不可欠です。企業には商品・サービスのイノベーションと給与アップの二つの努力が求められます。

鈴木智子

まさにブルー・オーシャン戦略ですね。競合とまったく異なる戦略を取ることで勝ち進んでいることが分かります。 同じブランドで新たなカテゴリーへ「変身」できるのは日本企業の特徴でもある長寿性につながっている要因の一つであり、日本企業の強みかもしれません。ブランドの一貫性を重視する欧米ではなかなか変身はできないように感じます。「変身」のプロセスを明示的に企業価値の向上につなげることが大切になるように思います。

鈴木智子

タイパ志向が増加しているといわれる一方で、時間をかけて楽しむ消費が増えているという現象で、消費者は気まぐれな存在だなと改めて思いました(笑)。これだからマーケティングは難しいですし、面白いんですよね。

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