世界初のクレジットカードはダイナーズクラブによって発行されていたこともあり、アメックスは1958年に始めてクレジットカードを発行した当初から差別化を意識し、単なる機能的便益(現金の代替品)でなく、情緒的便益(憧れや喜び)の提供に力を入れてきました。プレミアムなポジショニングを確立するため、会員を限定し、プレミアムなブランドイメージを醸成と特別な顧客体験の提供に力を注いできたのです。2000年代に入り、米国ではChaseやCITIなどによる参入もあり、ロイヤルティプログラム付きのクレジットカード市場は激化しました。それでもアメックスが強さを誇っているのは、培ってきたブランド力の賜物だと思います。
フリマアプリという新規参入によってリユース市場が拡大し、競合もその恩恵を受ける構図が見てとれます。プレーヤーの増加と同時に、SDGsの浸透などで、消費者のリユースに対する意識が変化したことも大きいです。そうなると、フリマアプリとリアル店舗のそれぞれの特徴が消費者に支持されます。フリマアプリは便利ですが、売り手にとっては在庫の管理(売れるまで手元で商品を保管)・配送の手間など、買い手にとっては商品が確認できない・梱包が雑なことがあるなど、オンラインやり取りならではの不便さも生じます。リアル店舗だとそうした不満が解決されます。市場の拡大と共に様々な形態が共存することで、市場の活発化が期待できます。
ソバーキュリアスというトレンドワードが広まることで、飲むことが好きな方が肩身狭くならないといいなと思います。アルコールは飲みすぎると健康にもお財布にも人間関係にも害ですが、適度に嗜めば人生の潤滑油となってくれることが分かっています。セルフコントロールの研究でも、過度に自制心を利かせると(我慢しすぎると)、反対に健康に良くないことも明らかになっています。また、アルコールは人類の文化そのものでもあります。紀元前8500年も前の頃から作られてきました。食事とお酒のマリアージュは食文化を豊かにしてくれました。こうしたことも忘れられることなく、飲む人も飲まない人も楽しめる、お酒の文化が続いてほしいです。
日本の高品質なおもてなしサービスは、どこでも誰でも体験でき、ある意味「無償」になっていると思います。宿泊産業でいうと、ビジネスホテルでも高級ホテルでもサービス品質は素晴らしいです。これは日本の良いところでもありますが、人材不足や賃金課題を考えると、おもてなしサービスは高価格帯で提供して、サービス提供者にも還元する仕組みが重要になるかもしれません。一方、日本はサービスロボットのフィールド実験も進んでいるので、人によるサービス、ロボットやAIによるサービス、人とロボットの協働によるサービス等、内容と価格の差別化が進むと、品質の高さは維持しつつ、顧客価値に見合うサービスを提供できるのではと思います。
ラグジュアリーの作り手としてのプレゼンスは低い日本ですが、歴史や伝統があり、良いモノやサービスへの目が肥えている日本人は、ラグジュアリーを理解し愛でることができます。すなわち、ラグジュアリーを作る上で大切なことを理解できる素地をすでにもっているということです。 日本のラグジュアリーが世界でプレゼンスを高めるためには、これまでの品質の高いモノづくり・サービスづくりに加えて、強いブランドづくりが必要になってきます。いいかえるならば、ブランドの核となるモノやサービスはすでにもっているので、ブランドのストーリーや夢、憧れを視覚化し、多くの人にコミュニケーションしていけば、世界でもっと輝けると思います。
鈴木智子
一橋大学 教授
一橋大学 教授
【注目するニュース分野】マーケティング、消費者行動、ブランド戦略
【注目するニュース分野】マーケティング、消費者行動、ブランド戦略