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竹中治堅

政策研究大学院大学 教授

政策研究大学院大学 教授

日本政治、比較政治の研究、教育をしています。関心は首相の指導力、コロナ危機への対応過程、参議院の役割など。著作に『コロナ危機の政治:安倍政権vs.知事』『参議院とは何か – 1947〜2010』(2010年度大佛次郎論談賞受賞)『首相支配 —日本政治の変貌』など。
【略歴】東京大学法学部卒。スタンフォード大学政治学部博士課程修了。大蔵省、政策研究大学院大学助教授、准教授を経て現職。
【注目するニュース分野】政治・外交
日本政治、比較政治の研究、教育をしています。関心は首相の指導力、コロナ危機への対応過程、参議院の役割など。著作に『コロナ危機の政治:安倍政権vs.知事』『参議院とは何か – 1947〜2010』(2010年度大佛次郎論談賞受賞)『首相支配 —日本政治の変貌』など。
【略歴】東京大学法学部卒。スタンフォード大学政治学部博士課程修了。大蔵省、政策研究大学院大学助教授、准教授を経て現職。
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竹中治堅

一連の連載には日本が年金支給年齢引き上げの改革を実施する時期を逸したことを指摘するなど興味深い指摘もある。ただ、改革をする場合の本丸は診療報酬の見直しである。読者がその是非を判断するのに必要なのは現在の診療報酬のもとでの大規模医療機関と小規模クリニック=開業医の経営状況についての情報である。一般に開業医は高収入であると信じられている。日本医師会は経営状況が厳しいと訴え診療報酬の引き上げを求めている。果たした本当なのか。更なる情報を追加の取材で明かしてほしい。

竹中治堅

問題が多い実習制度を改革すること自体は評価できる。しかし、政治的には、この制度を含め、外国人労働者受け入れのための様々な制度は自民党の岩盤支持層である中小企業の経営者の要望に応じた政策である。一連の制度のもとで働く人々は最低賃金の対象にはなる。しかし、労働力供給が増えることに変わりはなく、賃金水準全体への下方圧力となる。一方、岸田首相は賃上げを重視する。政府によれば1人あたり実質賃金は過去30年で実に1.05倍しか伸びていない。さらに最近、インフレのためで実質賃金は低下している。外国人労働者受け入れ拡大は賃上げ政策と矛盾する。首相はむしろ最低賃金の引き上げなどに注力すべきである。

竹中治堅

首相は日本で最も難しい仕事の一つである。しかし、安倍晋三氏のように再登板でない場合、ほとんどの首相にとって、最初の経験となる。頼りになるのは官邸での経験や派閥を中心に周りにいる政治家からの助言であろう。現在必要とされる政権運営手法は55年体制の頃と大幅に異なる。岸田首相にとって気の毒なのは宏池会が政権を獲得するのは宮沢喜一元首相以来、ほぼ30年ぶりということである。首相周辺に官邸経験がある政治家はほぼ見当たらない。一方、政権運営の仕方として宏池会に残る記憶は55年体制や「古い自民党」時代のものではないか。と考えると入閣待機組からの積極的登用や、記事にある副大臣・大臣政務官人事も説明がつく。

竹中治堅

首相は所得減税で内閣支持率を上げ、解散する機会を探っていたのだろう。フィリピン、マレーシア訪問、APEC首脳会議など外交で実績を重ねることで、上向かせることも期待していたはずである。だが、各社世論調査で支持率は低下した。昨年末に首相は防衛費のために所得税を含めた増税に強くコミットしており、国の基本政策でブレた、または一時的人気取りと多くの国民が感じたためであろう。こうして解散できる状況ではなくなった。防衛増税の旗もおろしておらず、首相の経済政策は根本のところで一貫性を欠くことになった。解散できないまま総裁選を迎える可能性もある。首相にとって幸いなことは現時点で有力な対抗馬がいないことである。

竹中治堅

世襲でもなく、地盤もない政治家が首相に上り詰めたことは偉業である。菅政権にはいろいろな批判もある。しかし、福島原発事故の時に東京電力に乗り込み、東京電力が福島原発から撤退せず、事故対応を続けることを確実にしたことを評価したい。東京電力は撤退を考えていなかったと説明する。そうかもしれない。ただ、首相が直接働きかけたことで確実になった。大きな功績である。また、社会保障と税の一体改革の議論を始め、消費税引き上げへの道を開いたことも評価すべきである。

竹中治堅

首相は、国政の最重要政策の一つである税制で増税路線の必要性を昨年12月に言葉を尽くして訴えた。しかし、首相はブレ、「分かりやすくお返しする」という理由で減税を打ち出した。国政運営について首相に定見はあるのかと多くの人が感じても不思議ではない。さらに実施方法をめぐり政権の議論は混迷している。支持率が低下するのは当然の帰結である。減税の廃止は増税を意味し、一度始めた減税を短期間で中止することは困難であろう。その場合、財政状況が一層悪化するだけでなく、防衛増税の実施は困難になり、国防政策にも悪影響を及ぼす恐れがある。また、世論は減税に否定的であることが示された。首相は減税を撤回すべきである。

竹中治堅

首相は政権浮揚を意図して減税政策を打ち出したことは明らかである。しかし、そもそもこれまでの増税路線との整合性が取れていない上、よりシンプルな給付をなぜ実施しないのかという疑問にも明快な解を出せていない。制度設計の上でも①総額、②所得制限、③期間、④延長条件などをめぐり、早くも混乱が始まっている。国会審議で、与党の参議院幹事長が首相の指導力について疑問を呈示し、与党の政策責任者が給付ではダメなのかと指摘する事態となっている。政権浮揚に程遠い状況だ。今後の与党内の議論の展開が首相の求心力に及ぼす影響に注目する必要がある。

竹中治堅

河野龍太郎氏は『成長の臨界』で財政赤字増加が社会保障制度への信頼を損ない、国民が消費を控え、貯蓄を増やすことになり、企業のコストカット型経営に繋がっていることを示した。とすれば、財政赤字をさらに増やす減税や補助金配布をしない方が首相が目指すコストカット型経済からの完全脱却に貢献したはずである。また、所得減税はこれまでの首相の政策と整合性が取れず、政権への信頼を損なった。税収還元とガソリン補助金の部分以外は適切な政策であり、愚直にこうした政策を実施していけば、低迷気味の支持率も上昇に転じたであろう。恐らく、一部の自民党内の声に「聞く力」を発揮した結果であろうが、首相の判断は惜しまれて余りある。

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長崎4区は厳しい情勢と報じられていたが、自民が勝利した。岸田首相は自身への打撃を最低限に抑えることができた。ただ、同日行われた所沢市長選挙の結果に注目したい。民主党の元衆議院議員で無所属の小野塚勝俊氏が自公推薦の無所属の現職、藤田正人市長をかなりの票差で破った。現時点での都市部での自民党の勢いをかなり示しているのではないか。岸田首相は、昨年、所得税を含めた増税の方針を示したにも関わらず、所得減税を打ち出してしまった。内閣への信頼を損なったはずである。税制は国政の根幹で、ブレてしまったことの悪影響は大きい。減税を撤回するわけにもいかず、打開策はなかなか見当たらない。

竹中治堅

昨年12月、首相は戦闘機やミサイルを「借金で賄うことが本当に良いのか」と強い言葉で防衛増税の必要性を訴えた。増税案には所得増税も含まれている。1年も経たないうちに所得減税方針を打ち出した。首相は税制という国家の基本政策でブレてしまった。首相の判断は内閣への国民の信頼を損なうのではないか。また、多くの国民は減税を選挙目当てと批判的に見るであろう。そもそも、財政赤字は深刻で減税をする余力はない。さらに首相は二つの問題を作ってしまった。時限的としても停止は実質増税を意味し、今後、首相は延長の有無をめぐり、政治資本を費消することを余儀なくされる。防衛増税は当面困難になり、首相は財源確保策も迫られる。

竹中治堅

昨年12月に首相は防衛費増額のために増税に踏み切る方針を示し、「安定財源は将来世代に先送りにせず今を生きる我々の責任として対応すべきだ」(『毎日新聞』22年12月17日)と言い切った。財源には東日本大震災の復興財源に充ててきた所得増税の延長も含まれる。一部で、今後、首相は減税への意欲を示すと報道されている。税制は国の根幹に関わる問題であり、本当であれば、基本政策について首相はブレたことになる。一時的還元としても、減税すれば継続を巡り政治資本を消耗することは必至である。防衛増税も難しくなり安保政策への波及も不可避だ。減税すれば、国政運営に当たる上での定見はあるのかと問われることになるだろう。

竹中治堅

今夏、タクシーが掴まらずに苦労した人は多いのではないか。海外では投稿者はUberなどライドシェアを頻繁に使う。アプリで依頼、待ち時間は少なく、料金も事前にわかり、登録したカードで自動決済、領収書はメールで送られてくる。運転手はカーナビに従って運転する。とても便利である。ライドシェア導入で、タクシー待ちの問題が解決するはずである。最近は道を知らない運転手も多く、カーナビによる運転でもサービスの質は変わらないはずだ。都市部も含めて全面解禁すべきである。タクシー業界に忖度して用語を自己検閲しているようでは本気度が疑われる。首相が姿勢を変え、既得権益と戦う姿勢を示せば、国民も首相を支持するはずである。

竹中治堅

来年秋に自民党総裁選が予定される。それまでに総選挙がなければ、総裁選前の支持率が低ければ、選挙を控えて自民党の「顔」を変えようという動きが生まれる恐れがある。今後支持率が上向くかは定かではない。今は高くはないが、低過ぎるわけでもない。野党は分裂しており、選挙をすれば自民党は恐らく勝利できる。政権維持のためには、今秋解散が望ましいはずだった。だが、首相は減税発言を繰り返し、税制についてブレてしまった。防衛費のために増税する方針をすでに力説しているからである。税制は国家運営の基本であり、我々国民の多くは首相に定見はあるのかと疑うのではないか。支持率に悪影響があれば、今秋解散は厳しくなるだろう。

竹中治堅

質問通告時間に関する合意が尊重されない最大の理由は、内閣に法案審議に関与する権限がないためである。英国のように内閣が採決日時を含め法案審議日程の決定に強い影響力を行使できれば、質問通告時間が守られなかったことを首相・閣僚が理由に質問に答えないという選択ができるはずである。しかし、現在、こうした主張をすれば、国会議員は反発し、法案審議が遅れるはずである。内閣は多くの法案を成立させるために法案審議の遅れを避けたいと考えている。このため質問通告が遅れた場合でも、残業をしてでも、答弁の準備をせざるを得なくなる。国会法を改正し、法案審議日程の決定に内閣が関与できるようにするべきである。

竹中治堅

支持率より不支持率が高いため、首相は躊躇し、一部で可能性が指摘された臨時国会中の解散はないのかもしれない。ただ、今後も支持率が上昇する保証はなく、自民党総裁選までに解散のタイミングを掴めない恐れがある。支持率が上向かず、自民党総裁選前に解散できないとすると総裁選では総選挙の「顔」を選ぶことになり、首相から見ると有力な対抗馬が出馬するというリスクも出てくる。重要なことは一部の反対を恐れずに日本の経済・社会を改革する政策を着実に実施し、国民からの信頼を確保することである。

竹中治堅

今夏、タクシーがつかまらず困った経験をされた方は多いだろう。ライドシェアが解禁されていれば猛暑の中、より容易に移動できたはずである。ライドシェアはデジタル技術を駆使して生まれたサービスである。世界の主要国で利用できないのは日本くらいのものである。これまで解禁できなかったのはタクシー業界の反対が強かったためである。岸田内閣はデジタル技術を活用し、行政手続きの効率化や社会課題の解決を進める方針を示している。タクシー業への帰省を見直す一方で、我々の生活がより便利になるライドシェアの普及も進めるべきである。条件をつけるのではなく全面解禁することを求めたい。

竹中治堅

現在、支持率が不支持率を下回っており、総選挙に踏み切るのに好ましい環境ではない。だが、支持率が上向く保障もない。世界経済の状況も気がかりである。景気が悪化すれば支持率はさらに下がるであろう。首相が避けたいのは状況が好転するのを待って、選挙を先延ばした挙句、さらに悪化した状況で総選挙を迫られることである。支持率がさらに低下し、解散できずに総裁選を迎えると別の政治家が「選挙の顔」として総裁に選ばれる可能性すらある。野党は分裂しており、選挙協力で合意できるかもはっきりしない。選挙を行う場合、①支持率は低迷、②野党は分裂という二つの条件が重なった2000年6月の総選挙と似た状態となるのではないか。

竹中治堅

日本テレビ放送網株式会社がこういう申し入れをするのももっともなことである。しかしながら、同社は中立性が期待されるニュース番組にジャニーズ事務所関係者の起用を続けている。このことについて同社は9月14日に「基本的には編成方針の変更の予定はない」と説明している(『読売新聞』9月15日)。同社は同事務所の過去の人権侵害に対して実質的に「お咎めなし」の態度を取っているということである。同事務所にこのような緩やかな対応をしていることも、申し入れをするような事態を招いている一因ではないのか。

竹中治堅

派閥という観点から見ると基本的に旧自由党系で要職を固めている。これまでと同じ傾向である。重要・看板政策に関係する外務、財務、厚労、デジタル、少子化に宏池会系を配す。統一教会問題担当の文科には岸田派を充てている。防衛、経済再生は宏池会と同じ源流の茂木派である。執行部は安倍派の政調会長を除き、旧自由党系で固めている。茂木派には異例の二つを配分。安倍派は重要閣僚の官房長官、経産、総務、農水を確保。しかし、4人は派閥規模に比べ少ない。もっとも首相は閣僚就任への期待が非常に高い当選6回以上で未入閣者を1人に抑え、5人衆を引き続き要職で起用、不満を防いでいる。派閥目線では手堅い人事である。

竹中治堅

重要政策・看板政策で見た場合、官房長官、財務相、経産相、経済安保担当相、デジタル担当相は留任、内閣の骨格は変わっていない。首相の人事権が強化されたことを背景に重要・看板政策担当の閣僚の任期の長期化は小泉政権の頃から始まった。第二次安倍政権でも同様であった。外相交代は少し意外だが、今回の人事は基本的にはこの基調が続いていることを示している。

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