企業経営への「やせ薬効果」注視を ラナ・フォルーハー
立ち見席だけの医学研究の結果発表が大観衆を集めるようなことはめったにない。だが2週間ほど前、米フィラデルフィアでそんな光景が見られた。米国心臓協会の会合で、医療専門家とメディアが大宴会場を埋め尽くしたときのことだ。 聴衆が聞いたのは、爆発的人気を呼んでいる新たな肥満症薬の一つである「ウゴービ」が患者を劇的にやせさせ、糖尿病のリスクを下げられるだけでなく、心臓発作や脳卒中で死亡する確率を20%引き
小口貨物、米国に大問題もたらす ラナ・フォルーハー
米国や中国を含む21カ国・地域が参加して17日まで米西部サンフランシスコで開催されるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議では通商関係から通貨、債務問題まで、あらゆる問題について議論になるとみられる。さらに意外な問題も取り上げられる見通しだ。 それは合成麻薬フェンタニルで、米国では毒性の高いこの麻薬との関連により、1年で約7万人が死亡している。だが、フェンタニルは同時に、脱グローバル化に向
米FTC、非伝統的な法解釈でテック大手と対決 記者解説
米連邦取引委員会(FTC)は、米グーグルと米アマゾン・ドット・コムに対してそれぞれ反トラスト法(独占禁止法)違反の疑いで提訴しています。FTCのカーン委員長はアマゾンの
食料不安とストの背後に寡占問題 ラナ・フォルーハー
ここ数年、企業に影響を与えている大きな傾向と言えば、記録的な労働争議の多さと反トラスト法(独占禁止法)を巡る訴訟の急増だ。 米国では今年に入ってストライキにより失われた労働日数が約四半世紀ぶりに最多を更新する一方、政府は反トラスト法違反の疑いがあるとして数十年ぶりの厳しい姿勢で訴訟に踏み切っている。欧州やほかの国・地域でもこの2つの傾向は顕著だ。 これは、ここ数十年にわたり企業の統合が進み、かく
アマゾン提訴で独禁政策激変 ラナ・フォルーハー
重要な政策問題を巡る社会の機運が根本的に変わるときがある。米国の反トラスト法(独占禁止法)を巡る政策は今まさしくそのときを迎えている。 この1カ月ほどの間に、米アマゾン・ドット・コムが米連邦取引委員会(FTC)に反トラスト法違反の疑いで提訴され、米グーグルの反トラスト法違反の裁判の公判が始まり、さらに不正競争の疑いがある企業に資金を提供したプライベートエクイティ(未公開株式)投資会社もFTCに提
労働者もAI規制を主導できる ラナ・フォルーハー
人工知能(AI)を誰が規制すべきかについての議論は、典型的なトップダウンで進められている。巨大テック企業は、選挙で選ばれた議員が規制を定めるべきだと主張している。これまで米連邦政府はターゲット広告や「監視資本主義」の問題に長らく苦闘しながら取り組んできた。AI規制案については、米国の各州が提案しており、多くの場合、それぞれの地域での大規模な産業利用に沿う内容となっている。欧州や中国の当局もアイデ
今こそ貿易の前提の見直しを ラナ・フォルーハー
2008年の世界金融危機から得られた最も重要な教訓の一つは、金融モデルは必ずしも常に正しく機能するわけではないということだった。 数千にも上る変数をブラックボックスともいえるアルゴリズムに放り込み、世界の金融機関が毎日取る数百万ものポジションと混ぜ合わせ、そこから先を予測する「外挿」という手法を使えば、未来のバランスシートがどう増減するか単純でわかりやすい予測が出てくる――。こんな金融モデルが機
米大統領選をも左右するUAWスト ラナ・フォルーハー
米大手自動車メーカーが集まるミシガン州デトロイトは今、ストライキの真っただ中にある。15日時点で、米自動車業界の労働者の約40%が加入する全米自動車労組(UAW)は、米ゼネラル・モーターズ(GM)、米フォード・モーター、そして米ブランド「クライスラー」や「ジープ」を抱える欧州ステランティスの自動車大手「ビッグ3」を相手に闘争を繰り広げている。その大きな目的の一つは、電気自動車(EV)の生産に携わ
レーガノミクス見切り始めた共和党 ラナ・フォルーハー
40年近く前の1986年、レーガン米大統領は共和党の当時の考え方をこう表現した。「最も恐ろしい9つの言葉に集約すると『私は政府の人間で、あなたを手伝いに来た』という発想だ」 つまり、最もわかっているのは政治家ではなく市場であり、民間部門が公的部門より相対的に力を持つほど望ましいと伝えたかったのだ。 右派コラムニストまでもが権力握る民間企業批判 だが最近の共和党はそうではない。来年の大統領選の指名
米国の労働市場、女性がけん引 ラナ・フォルーハー
今や過去のものになった新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)時代の労働トレンドのうち、最も重大だったのは恐らく「シーセッション(女性不況)」だろう。女性は米国の労働力から逃げ出すどころか、今市場をけん引している。 新型コロナが最初に襲ってきた時、女性の労働者は大きな打撃を受けた。女性はレジャーやホスピタリティー産業、教育などコロナ下で一時閉鎖を余儀なくされた産業で働く比率が高い上に、家