仮想通貨、金融の本流に吸収へ ジリアン・テット
テクノロジー業界の関係者の間で最近持ち切りになっている話題は、米シリコンバレーで起きた米オープンAIのお家騒動だ。だが、技術の行方に影響を及ぼす別の驚くべき物語は、その舞台から少し北へ行ったワシントン州シアトルの連邦地方裁判所でも起きていた。 米司法省は21日、マネーロンダリング(資金洗浄)や詐欺の罪で世界最大の暗号資産(仮想通貨)交換業者であるバイナンスに対する大々的な刑事告発を発表し、同社を
「トランプ氏2期目」想定を ジリアン・テット
「忘れるな、忘れるな、11月5日を 火薬、背信、陰謀を」――。これは1605年に英議会を爆破しようとした反逆者のガイ・フォークスをしのび、毎年11月になると(筆者のような)英国の子供たちが唱えた伝統的な歌の歌詞だ。 しかし最近、この歌詞は21世紀ならではの意味も持ちあわせるようになった。2024年11月5日には米国で物議を醸す大統領選が実施されるからだ。 すべての激戦州で優位 大統領選まで1年を
WeWork破綻、学ぶべき教訓 ジリアン・テット
米シェアオフィス大手ウィーワークの共同創業者のアダム・ニューマン氏やソフトバンクグループの孫正義会長兼社長といった大金持ちの起業家は通常、ラテン語を学ぶことはない。大半の不動産王や彼らに資金を貸す投資家にも同様のことが言える。 オフィスの語源 これは残念なことだ。企業価値が推定470億ドル(約7兆1000億円)からほぼゼロとなり、大株主のソフトバンクに懲罰的とも言える大損をもたらしたウィーワーク
サイバー恐喝、保険に盲点 ジリアン・テット
11月初め、テクノロジー業界の関係者の目は英ロンドン近郊のブレッチリー・パークにくぎ付けになっていた。英政府が人工知能(AI)の安全性を議論する国際会議「AI安全サミット」を開催したからだ。会議はそこそこの成功を収めた。 「身代金」支払い停止求める しかし同時期に、米ワシントンでもデジタルに関する別の国際会議が開かれていた。ランサム(身代金)を払わない限りアクセスできないようにコンピューターファ
「ズル」をするAIの危険 ジリアン・テット
数カ月前に米サンフランシスコで車を運転していると、自動運転車の後ろを走っていることに気づいた。少し不安な気持ちになった。自動運転車の運転が下手だったり危険だったりしたからではない。むしろ運転のマナーが良すぎたからだ。 具体的に言えば、自動運転車は律義にすべての一時停止の道路標識で止まり、黄色信号でブレーキを踏み、公式な制限速度を守った。おかげで筆者も同じことをせざるを得なくなり、少々イライラした
「2%物価目標」は金科玉条か ジリアン・テット
今月初め、国連貿易開発会議(UNCTAD)が年次報告書を発行した。報告書には欧米諸国の中央銀行にその使命を考え直すことを迫る、目新しい文言が含まれていた。 スイス・ジュネーブに本部を置くUNCTADは「中央銀行は2%のインフレ目標を緩め、より広範な安定化の役割を担うべきだ」とし、「金融政策の引き締めはこれまで物価上昇を和らげる上でほとんど貢献せず、厳しい経済格差をもたらし、投資機会を損ねた」と嘆
米中分断、供給網は「再配分」へ ジリアン・テット
世界は今、紛争による恐ろしい人的損失と向き合っている。だが、中東とウクライナから地獄のようなニュースの見出しが続々出てくるなか、エコノミストはこの地政学的な分裂の経済的コストも算出しようとしている。 ブロック化を予測 国際通貨基金(IMF)を例にとろう。年次総会が始まると、IMFは債務と経済成長、インフレの将来の軌道についての恒例の分析を盛り込んだ最新の世界経済見通し(WEO)を公表した。今年の
荒れる米国債市場、さらなる騒動も ジリアン・テット
最近まで、20年物など長期の米国債と連動する「$TLT」と呼ばれる上場投資信託(ETF)は極めて退屈に思えた。売買高が少ないため価格変動は小幅にとどまっていた。おかげで、こうしたETFはリスクを嫌う投資家に適した商品だといわれてきた。 今は違う。3日には、このETFの1日の売買高が7100万件に達し、通常の数倍に上った。10月最初の週だけで価格が3%下落し、今では過去半年間の下げ幅が20%、20
世銀融資、民間投資の呼び水に ジリアン・テット
国連が9月下旬に総会を開いた時、メディアの関心、およびデモ参加者の関心はもっぱら政治家に向けられた。だが、その陰で、投資家が注目しておくといい別のイベントが開催されていた。世界銀行のために最近立ち上げられた「民間セクター投資ラボ」が同行の活動を一気に加速させる方法を議論するために初会合を開いたのだ。 仏保険大手アクサのトーマス・ブベル氏や米資産運用大手ブラックロックのラリー・フィンク氏、中国平安
ロシア凍結資産、移転に向けた難問 ジリアン・テット
米国きっての憲法学者でハーバード大学名誉教授のローレンス・トライブ氏はしばしば、トランプ前米大統領の大統領選出馬や米国の債務上限といった問題について重大な法的判断を表明する時にニュースの見出しを飾る。 そして、今回はウクライナをめぐって注目されている。ウクライナのゼレンスキー大統領が先日、国連総会で支持を求めたのとほぼ時を同じくして、昨年凍結された推定3000億ドル(約44兆円)相当に及ぶロシア