インドネシア大統領 後継と新首都を巡る思惑と現実
インドネシアはかつての「非同盟運動」の中心的存在であり、1955年に西ジャワ州の主要都市バンドンで起点となるアジア・アフリカ会議を開催した。そのインドネシアが2023年8月、同運動の流れをくむBRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)への新規加盟を辞退したことは驚きを呼んだ。拡大に走るBRICSは「グローバルサウス」と呼ばれる新興・途上国の擁護者を自任している。 【関連記事】世界の5
世界の5大経済国入りを インドネシア大統領の野望
インドネシア大統領のジョコ・ウィドド氏は先を急ぐ男だ。多数の閣僚とお抱え料理人、そして100人の企業トップを伴い、同氏はボルネオ島(カリマンタン島)の熱帯雨林のど真ん中に足を運んだ。この地に新首都を建設するという大胆な計画の視察のためだ。 38度の熱暑下、「ジョコウィ」の愛称で知られるジョコ氏はあわただしいスケジュールで、ジャングルを切り開いた土地の起工式に臨んだ。空港、学校、2つの病院、ホテル
洋上風力、能力増に長期的視点重要 物価高の危機克服へ
コストが急激に増加する一方で、洋上風力の電力の契約価格は上がっていない。事業者側は通常、長期の電力販売契約を結ぶか、着工前に補助金交付の決定を得ているため、投資家は将来の収益をはっきり見通せ、変動の大きい電力スポット価格に翻弄されにくい。現在、多くのそうした契約が建設費の高騰で、採算が危うくなりかけている。特に打撃を受けているのが米国、英国で進行中のプロジェクトだ。 米資産運用会社アライアンス・
洋上風力に物価高騰の逆風 コスト増の転嫁難しく
「きょうはいい日だ」。英スコットランド東沖の巨大な洋上風力発電所「シーグリーン」で114基のタービンが回るのを見ながら、グレアム・ウォッターズ氏は言った。10月半ば、ほぼ14年前に始まったプロジェクトが全面稼働に至った。 フランスのエネルギー大手トタルエナジーズと英電力大手SSEの子会社SSEリニューアブルズの合弁会社であるシーグリーンは、スコットランド最大の風力発電所で、160万世帯分の電力を
全固体電池 日本勢、中国のEV市場支配逆転の切り札か
全固体電池が導入されれば、世界の自動車業界の未来に大きな影響を及ぼす可能性がある。 現時点で自動車業界の次の段階の覇者となる可能性があるのは、電池技術の面でも、製造の面でもトップを走る中国だ。国際エネルギー機関(IEA)によると、2022年に世界で生産された電池の75%超を中国が占めた。 中国の寧徳時代新能源科技(CATL)は他の追随を許さない世界最大の車載電池メーカーであり、37%の市場シェア
全固体電池、自動車産業を変える道程
1992年、ソニーは携帯型電化製品に革命をもたらした。長年にわたって取り組んだリチウムイオン電池研究の成果を活用して携帯電話や小型ビデオカメラを商品化し、世界の消費者の生活を変えた。 化石燃料への依存度を下げるために世界のエネルギー・輸送システムを改革するという非常に大きな課題に取り組むうえで、電池は重要な役割を果たす。リチウムイオン電池の製造コストは大幅に低下し近年の電気自動車(EV)人気につ
ハリス米副大統領、「度が過ぎた懸念」払拭できるか
カマラ・ハリス米副大統領は自らは政治的な存在感を高め、有権者と心を通わせようと努めている。だが一方で、共和党からは常に主要な攻撃対象となり、保守系メディアやSNS(交流サイト)でも標的にされ続けている。 【関連記事】米大統領選、民主党勝利に不可欠なハリス副大統領の活躍 「ジョー・バイデン大統領に1票投じるのは、ハリス氏に投票するのと同じだ」。24年大統領選の共和党候補指名を争うニッキー・ヘイリー元
米大統領選、民主党勝利に不可欠なハリス副大統領の活躍
10月11日午後、カマラ・ハリス米副大統領(59)が米サウスカロライナ州にある米軍のチャールストン統合基地を訪れた。曇り空の下、副大統領専用機「エアフォースツー」のタラップを降りると、4日前に勃発したイスラエルとパレスチナのイスラム組織ハマスの武力衝突について記者団に短くコメントした。 「7日のハマスによる奇襲攻撃にはただただ憤りを感じている。バイデン大統領も私もイスラエルとイスラエル国民を全面
独仏の原発めぐる対立、EUに波及 電力改革は膠着
フランスの原発推進政策に対するドイツの反発の根底には要因の一つとして、特に環境政党の「緑の党」に色濃い思想が絡んでいる。エネルギー問題に関する協議を主導しているのは、同党のハベック副首相が大臣を兼務する経済・気候保護省だ。 同省のギーゴルト事務次官は、ドイツが「欧州の反原発運動を先導している」との言い分は「完全に間違っている」と語る。フランスが原子力を利用する権利を認めないわけではなく、欧州連合
独仏、原発推進で亀裂 「脱化石燃料」に暗雲
ライン川の対岸にドイツを臨むフランス東部の村、フェッセンハイム。そのそばに、運転を休止した原子力発電所がある。原発の閉鎖を訴えたドイツの活動家たちの姿も今はなく、稼働は3年前に停止した。 だが、1977年に建った同原発の再利用をめぐり、意見の対立はなおも続いている。その根底には、ライン川を挟んで隣り合う独仏間の原子力政策をめぐる深い亀裂がある。 同原発を低レベルの放射能にさらされた金属の再処理施