仮想通貨、金融の本流に吸収へ ジリアン・テット
テクノロジー業界の関係者の間で最近持ち切りになっている話題は、米シリコンバレーで起きた米オープンAIのお家騒動だ。だが、技術の行方に影響を及ぼす別の驚くべき物語は、その舞台から少し北へ行ったワシントン州シアトルの連邦地方裁判所でも起きていた。 米司法省は21日、マネーロンダリング(資金洗浄)や詐欺の罪で世界最大の暗号資産(仮想通貨)交換業者であるバイナンスに対する大々的な刑事告発を発表し、同社を
世界に忍び寄る財政危機の脅威 マーティン・ウルフ
国際通貨基金の略称IMFは「It's Mostly Fiscal(ほぼ財政一辺倒)」の頭文字だというジョークを昔からよく耳にした。しかし、近年ではあまりピンとこない時期が続いた。IMFはギリシャやアルゼンチンなど、財政危機に陥った国の財政赤字の垂れ流しを批判したものの、金融危機以降は各国の財政政策について比較的寛容だったためだ。 その状況が変わっている。金利が「長期にわたって低い」世界
イスラエル、相次ぐ債券発行で8900億円の戦費調達
イスラエルはイスラム組織ハマスとの戦闘の費用をまかなうため、私募債の発行で数十億ドルを最近調達した。しかし、投資を呼び込むために極めて高い利率を設定せざるを得なかった。 10月7日のハマスによる攻撃以降、イスラエルは世界の債券投資家から60億ドル(約8900億円)以上を調達している。これには3度の新規債券発行による51億ドルと6度におよぶ既存のドルおよびユーロ建て債券の追加発行、そして米国にある
PEファンド、IPO株の非公開化・買い戻し続々
プライベート・エクイティ(PE=未公開株)ファンドの間で、少し前に新規株式公開(IPO)したばかりの会社を買い戻す動きが相次いでいる。株価が低迷する中で投資の回収を図る苦肉の策だ。 ここ数カ月、スウェーデンのEQT、英シンベン、米シルバーレイクといったPEファンドが自ら所有、またはかなりの割合の株式を持つ上場企業を上場廃止にしたり、買い戻しを検討したりするようになっている。 こうした動きは、PE
日本でMBO加速、上場企業へ圧力強く 低金利も後押し
日本でMBO(経営陣が参加する買収)が急速に広がり、過去10年余りで最速のペースに達している。株主アクティビズムやガバナンス(企業統治)強化を求める圧力が強まる一方、低金利で資金調達する道がまだ開かれていることが、株式市場からの退出を招いている。 11月に入り、教育や基礎素材、カラオケ業界の企業がMBOを立て続けに発表した。国内外のプライベートエクイティ(PE=未公開株)投資会社の間では、MBO
迫られる金融緩和への転換 マーティン・ウルフ
果たして中央銀行の政策金利は米国とユーロ圏でピークに達したのだろうか。そうだとすれば、金利はどれくらいのペースで低下するのだろうか。2021年半ばごろから、中銀は金融政策の大幅な引き締めを余儀なくされていた。だが、次にやらなければならないことは不透明だ。中銀関係者が次の計画について何を言おうとも、最終的には実際にその時に起こっていることがすべてを左右する。 もし多くの人が今見込んでいるように(食
自社株を現金化する米ウォール街幹部たち
米金融大手JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)が来年、保有する自社株12億ドル(約1800億円)相当の一部を売却する。ウォール街の巨人と称されたダイモン氏はこれまで決して自社株を手放さなかったが、保有株の一部を現金化したトップバンカーの仲間入りをすることになる。 ダイモン氏が売却を拒んできたのは、かつて師と仰いだ米シティグループのサンディ・ワイル元CEOがウォール
中国最大手銀行米法人にサイバー攻撃、米国債取引が混乱
フィナンシャル・タイムズ(FT)は9日、中国の最大手銀行である中国工商銀行(ICBC)の米国法人がランサムウエア(身代金要求型ウイルス)攻撃の標的となり、25兆ドル規模の米国債市場での取引に混乱が生じたと報じた。 ウォールストリートのトレーダーやブローカーたちは、ICBCが受けたサイバー攻撃からの影響を最小限に食い止めようと奔走している。 この攻撃は、世界の金融市場のなかでも最大規模で最も流動性
トレーダーの報酬は「ばかげた額」、英投資大手トップ
一つのファンドを複数の担当者が分担して運用にあたる「マルチマネジャー・ヘッジファンド」の隆盛は、ファンドマネジャーが目まぐるしく移籍する「メリーゴーラウンド」状態を生み出し、「ばかげた」額の報酬が支払われている――。ヘッジファンド欧州最大手、英マーシャル・ウェイス共同創業者のポール・マーシャル氏は嘆く。 同氏は8日、香港で開かれた投資イベントで、マルチマネジャー・ファンドが主流化し、「目をつけた
KKRとカーライル、PEファンド大手が業績で明暗
プライベートエクイティ(PE=未公開株)ファンドの世界大手2社が、四半期決算でくっきりと明暗が分かれた。米KKRが資金調達の見通しを上方修正する一方、米カーライル・グループはコスト削減の一環で人員削減に動いた。 7日発表の7〜9月期決算は、10年前にほぼ同規模だった両社の大きな差を浮き彫りにした。KKRは資金調達が「著しく上向いている」とする一方、カーライルは「あらゆる経費が見直しの対象」と従業